私の20世紀少年 -part1ー
浦沢直樹原作の大ヒット漫画、『20世紀少年』が公開された。
マンガは面白かったが、映画ははたしてどうか?
今回は20世紀少年のノリで昔のある話を一つ・・・。
書き方は違いますが勿論実話です。
ー 1987年、夏。
まだまだ家の周りには原っぱがいっぱいあった時代。
夏休みに入った僕達は例によってその日も探検に出かけた。
セミの鳴き声がうるさい。
暑さで空気が揺らいでるように見える。
夏休みに入る前に僕達2人は秘密基地を作ることを約束していた。
今日はその秘密基地をどこに作るかを探す冒険なのだ。
いつも学校に行くのに使う裏山じゃつまらない。
行ったことのない場所を探してみよう、ということになった。
幸い、家から少し離れれば周りは森ばかり。
『木や小枝を折って小屋みたいな秘密基地作ろうぜ』
そう友人のカズと話していた。
『でも俺達だけじゃさすがに難しいだろ?』
私が言うと、カズは
『じゃあ、いつものあいつら呼ぶか?』
と言った。
あいつらとはいつも一緒に登下校するサッカー部の奴らの事だ。
俺達は10人くらいで毎日学校まで通っていた。
『あいつら、ちゃんと作るかなぁ?』
俺が言うと
『まぁ邪魔になったら帰しちゃえばいいよ。手伝わせようぜ。』
と言ってカズは早速走って呼びに行ってしまった。
集合住宅地だから家同士は近い。なので戻ってくるまで
そんなに時間はかからないと思うが・・・。
呼びに行った奴らは小5や小4ばかり。
俺達小6の同級生を呼べば秘密基地作りもはかどるのにな。
俺は今日探検してみる予定の森の前で待つことにした。
座って待つ。
毎日暑いなぁ。夏休みの宿題は今日の分やっちゃったし、あとは
基地作るのにいい場所が見つかれば今日は最高だ。
正面を見れば、遠くに赤城山が見える。
町も見えた。
空が青い。
そのせいか雲が一層白く見える。
赤城山の上にモクモクの入道雲がある。
今日はまた夕立があるかもな。
昨日も夕方1時間くらい降った。
公園で野球をしていたところに降られた。
俺達の遊び時間に降るんじゃねえよ。
毎日そう思う。
カズはまだ戻ってこない。
あいつ、何やってんだよ。マラソン早いくせに!
カズはうちの小学校のマラソン大会では無敵だった。
『もしかして全部の家回ってるんかな?大体あいつらがいる家なんて
決まってるのに。ユキの家でファミコンしてるのがほとんどじゃん。』
俺達は普段激しく動いていたので、夏休みとかになると最初のうちは
普段出来ないファミコンをしまくっていた。
俺も帰ったら燃えろ!プロ野球でもやろ。
秘密基地も作るしファミコンも思いっきり出来るし、どんだけ遊んでも
明日も明後日もその次の日もずーっと休みなんて嬉しくて仕方がない。
顔がつい、にやついてしまう。
ホントににやついてたら、坂の向こうからカズが何人か引き連れて戻ってきた。
ようやく戻ってきやがった。
『おせーんだよ!』
俺が言うと
『黙れ。俺様のおかげでこれだけの人数が集まったんだぞ。感謝しなさい。』
とカズが言ってきた。
カズが連れてきたのはカズの弟・小4のスミ。同じく小4のラッシャー。
その兄貴の小6キム。小5のユキ。小6のブー、弟の小3ゴロー。
そして俺の弟リュウまで連れてきた。
これで全部で9人。
確かにこれなら基地が早く作れるかも。
『どこ行くわけ?』
スミ(小4)がカズに聞いた。
『ここの中だよ。』
カズが目の前にある森を指さしながら言った。
『ここかぁ。ここ前に入ったよ。面白いの何もないよ』
ラッシャー(小4)も言った。
『ここさぁ、蔓(つる)もないからターザンも出来ないし、あんまり面白くねえよ』
スミとラッシャーは以前入ったことがあるようで、それは俺達2人の
当初の期待を裏切る内容だった。
『どうする?』
俺とカズは顔を見合わせた。
『それよりさぁ、あそこ行かない?』
黙って事の成り行きを聞いていたユキ(小5)がある場所を指差した。
それは入る予定だった森の北、上り坂を歩いて10分ほど
かかる、俺達がずっと敬遠していた森だった。
何故敬遠していたか?
それは俺達にとって暗黙の了解だった。
プライドもあるから口には出さない。
しかし、みんなが何を思っているかは全員分かっている。
ズバリ、怖いのだ。
はっきり見たことはないが、何があるのかだけは地元の人間なら
大抵知っている。
俺達も無茶なことをしてきたけど、あそこだけは何故か近づく気に
なれなかった。
そんな場所なのに、ずっと敬遠してきたのに
禁断の一言をとうとうユキが言ってしまった。
『怖いの?』
ユキが言う。
『こえーわけねえだろ!!なぁ?』
カズが私に同意を求める。
『あー、怖いわけがないでしょ。俺達は行ってもいいけど、お前らが
本当に行けるのかよ!?』
俺がユキに聞いた。
ユキも意地っ張りなので
『全然行けるよ。じゃぁ、これから行こうぜ、みんなで。』
と言った。
『え~~~。』
ラッシャーが大声で拒否した。
リュウ(小3)やゴロー(小3)は口が挟めない。
『じゃあ、思い切って行こうよ』
今まで黙っていたキム(小6)が言った。
普段どちらかというとおとなしめなキムに言われちゃ
行かないわけにいかない。
『どうなっても知らねえよ』
ブー(小6)が敬遠する。
『ブーはいつでも一歩引くからな』
ユキ(小5)が言う。
カズが
『うるせえから行けばいいんじゃねえの?だったら早く行こうぜ。それに・・・』
ユキ『何だよ?』
『昼間じゃないとやばいっしょ?』
皆黙る。
確かにあんなとこ、夕方なんか絶対行けない。
『じゃあ早く行こうよ』
ラッシャーがせがむ。
俺も
『行くならとっとと行こうぜ。』
と皆を促す。
みんな妙な空気になりながらトボトボとそこへ向かって歩き出した。
その森の入口に着いた。
先はよく分からない。
ここで俺達は約束事を作った。
1、小さい奴らもいるのでふざけて急に逃げたりしない
2、単独行動は避ける(何が待ち受けているか分からないから)
3、妙な気配を感じたら小6が逃げろと大声で叫んで一目散に逃げる
というもの。
怖さが先行しているが、森といっても大きくはない。
森の向こうの方に大きな煙突が見える。
『あんなとこに煙突があるぜ』
俺が言うとみんな見上げた。
『何であんなとこに煙突があるんだろうね?』
皆不思議がる。
意味の分からない煙突は怖さを余計倍増させた。
獣道を歩き、中へと進む。
まだ俺達が歩いてきた道路から何十メートルも入ってない。
なのに何だ、この感覚は。
今から考えれば小学生だから行けたのだろう。
今の私だったら、あの感覚に見舞われた瞬間、絶対に進まない。
絶対戻る。
それでも中へ中へと進んでいく。
知らない間にみんなで体を寄せ合いながら歩いていた。
前方に何かが見えてきた。
あれがかの有名なものなんだな。
恐怖は頂点に達する。
50mくらい先にいよいよ見えてきた。
俺達は一旦止まり、深呼吸する。
この先のカーブを曲がればもう目の前だ。
みんな黙って再び歩き出す。
蝉の鳴き声だけが耳に入る。
カーブを曲がる。
ここからは夏を忘れた。
寒い。
震えてるからじゃない。
ここだけ温度が違うのだ。
明らかに温度が違う。
俺は思った。
これ、やばいよ・・・。引き返した方がいいかも・・・。
みんなそう思ったはずだ。
想像以上。
大体何でこんなに寒いんだよ・・・・。
好奇心旺盛な子供心をも敬遠させる目の前のもの、それは・・・。
昭和初期に建てられた、廃墟となった木造の病院だったー。
つづく