カラテ指導顛末記 vol.2 井原のナンパ
今回は井原第2弾をお送りします。
-その後、
井原は真面目に道場に顔を出していました。
しかし、マンツーマンでの基本稽古は全く進まず、一週間経っても
突きしか終わっていませんでした。
井原が入門してから一ヶ月後、親子連れの女性が入会してきました。
女性の名は大橋さん(仮名)。
小学生の息子と二人での入会でした。
井原とほぼ同時期入会の為、大橋さん親子と井原の3人で一列に並ばせ、
マンツーマンで基本指導を行うことにしました。
大橋さんは驚くべき速さで基本をマスターしていきました。
井原はそれに反比例するかのごとく、覚えが遅くなってきました。
理由は・・・
隣りにいる大橋さんばかり見ているのです。
チラ見全開。
そして私の言う事なぞどこ吹く風。私は井原に注意しました。
「井原。前を見なさい」
『デシっ!』
しかし、暫らくするとまた大橋さんを横目でチラチラ。
私は一旦休憩にしました。
休憩中、私は稽古初日で緊張されている様子の大橋さんに声をかけ、
緊張をほぐそうとしました。
私は大橋さんと話している最中、横から目線を感じました。
見ると井原が遠くからちょっと睨んでいるのです。
-何だ、あいつ。あんな目で見やがって。
私は井原に
-何だ!?何か用か?
と聞くと
『何でもないッス。デシっ!』
と言ってきました。
だったらいいが・・・。
再開後、私は井原と大橋さんの間に大橋さんの息子を挟みました。
「では続きから始めます。」
と言うと、井原が
『デシっ、先生。並び順間違ってます。デシっ!』
と言うので、
「これで始めます。」
と言うと、ガックリ肩を落とし、不満気な顔をする井原でした。
数日後-。
みんなと外れて3人での基本稽古をしている日々が続いていました。
合間の休憩中、井原は大橋さんに近寄り、何やら話している様子でした。
観察するに、どうも大橋さんに基本を教えているようです。
私は凄まじく気になりました。
-あいつ、変な事教えないだろうな・・・。
一通り教え満足したのか、井原は大橋さんと離れました。
大橋さんは真面目な性格の方らしく、井原の言う事も
真剣に聞かれていました。
気になった私は稽古終了後、大橋さんに聞きました。
「さっき井原何か話しかけていましたよね。あいつ何て言ってました?」
『はい。井原さんは以前違う所で空手をやっていたらしく、
今こうして後ろで基本を一から教わっているのも、ここの
流儀にあえて従ってやっているんだ、と。だから自分が教わって
きた打ち方・狙いどころも後で教えてやりますよ、とお話されていました』
と言うではありませんか。
私は本当に開いた口が塞がりませんでした。
-あいつ、吹きやがって。お前のどこが経験者だ。拳の握り方だって
豚足みたいじゃねえか。
全く困った奴だ。
まぁしかし、高校生だというのもあり、井原の性格を段々と理解してきた
私は、面白い奴が入ってきて楽しいくらいに思っていました。
周りの道場生に迷惑さえかけなければ。
が、しかし・・・・。
井原入門から3ヶ月後。
その頃には井原も大橋さんも基本を覚え、
皆と一緒に稽古に混ざっていました。
そんなある日。
稽古を終え、帰り支度をする一般道場生。
その中には井原と大橋さんの姿も。
私はこれから自主トレをするので、私と稽古する後輩数人と道着のまま、
暫し談笑していました。
そうこうする内、井原が
『デシっ!!ありがとございやした!』
と帰っていきました。
井原が帰って少し経った頃、大橋さんが
『先生。今お時間ございますか?
ちょっとお聞きしたいことがあるのですが・・・』
と何やら思いつめた顔をされ、話しかけてきました。
「大丈夫ですよ。何でしょう?」
『あの~、井原さんておいくつなのでしょうか?』
「えっ?」
返答に戸惑う私に、大橋さんは続けてこう言ってきました。
『先生もご存じだとは思いますが、最近よく井原さんから
話しかけられるんですよね。それは全然構わないのですが、
実は最近、井原さんから食事に行こうと誘われまして・・・』
「ほう~。」
『私の年齢を聞いてきて、『○○才なんだ。俺も24才だから
ちょっと俺の方が下だけど、釣り合うね。どう?今度食事でも。
その後ドライブなんてどう?』と言われたのですが、
どうお答えしていいか困ってしまって。それで先生に
一度ご相談にと思いまして・・・。』
と言われた。
聞き終えると、私は不謹慎にも大爆笑してしまった。
キョトンとする大橋さんに私は言った。
「あいつそんな事言いましたか!あいつもやりますね。
まず井原の年齢ですが、あいつ17ですよ。」
『えっ!!』
「なぁ、丸川君!」
と言って、私は一緒に稽古する為、残っていた丸川君を呼んだ。
「大橋さん、この丸川君は中学時代、井原と同級生だったんですよ。
な、丸川君」
『押忍!』
「丸川君、今何才?」
『押忍、17です。』
『そうなんですか~。私、全然疑いもしなかったです。だって井原さん、
休憩中や稽古終りにお話される内容といったら、いつも仕事の
お話なんですもん。今日は疲れた~、とか言ってて・・・』
私と丸川君は爆笑した。
『外車のセールスマンっておっしゃってましたけど・・・』
すぐさま丸川君が
『嘘です!』
と言った。
私も言った。
「セールスマンも何もあいつ高校生だから車乗れませんよ。」
『道場に来る際、乗ってくる車は少し離れた駐車場に
止めてると言ってましたが・・・』
「あいつはお母さんに送り迎えしてもらってますよ。」
『そうなんですか(笑)井原さんて面白いですね。私、すっかり
騙されてしまいましたね』
「大橋さんに不快な思いをさせてしまって申し訳ございませんでした」
『いえいえ、大丈夫です!何か高校生だと分かったら可愛くみえて
きました(笑)』
「えっ!井原が!!」
『はい』
大橋さんの温かい心により、この件は事無きを得た。
後日-。
道場のドアを開けて入ってきた井原に開口一番、私は言った。
「井原ーーー!!お前道場でナンパなんかするんじゃねえー!」
『えっ?デシデシ(いえいえ)。ナンパなんかしてないですよ』
「嘘つけーっ!こんにゃろう。お前、今日の稽古は地獄だからな」
『ちょ、ちょっと待って下さい。今日は用事があるので
途中で帰らせてもらおうと思ってたんです。』
「嘘をつくな、嘘をーー!」
『デシっ!ホントです。デシっ!!』
次回は
『vol.3 井原旋風 審査会で吹き荒れる 』
をお送りします
コメント
井原ありえねー!外車のセールスか!丸山君元気かな?まだぎょうざ焼いてんのかな?
Posted by: 佐藤館長の後輩の鹿野 | 2007年07月05日 21:50